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shoryu38の特撮・ヒーロー日記

ウルトラマン、鉄神ガンライザー、ゴジラ、ガメラ、アメコミ映画と色々な事を書いていくブログです。

「まほろば ~新世界~」 『ウルトラマンオーブ THE ORIGIN SAGA』エピソード12

まほろば ~新世界~」

ウルトラマンオーブ THE ORIGIN SAGA』エピソード12

2017年3月13日配信

脚本 小林弘利

監督 小中和哉

 

この最終回配信の直前に劇場版『ウルトラマンオーブ』の舞台挨拶で田口監督が「エピソード10構想」を発表した。どこまで公式に決まっている話なのかまでは不明だが、『オーブ』は全部で10のエピソードがある作品で『オリジンサーガ』はエピソード1でTVシリーズはエピソード6で劇場版はエピソード7だそうだ。つまり『オリジンサーガ』とTVシリーズの間には4つものエピソードがある事になる。

 

『オリジンサーガ』では最初はガイよりジャグラーの方が優秀で、ガイは光に選ばれてオーブに変身するようになってもジャグラーに助けられる事が多かった。しかし、ガイは戦う度にオーブの力を引き出していき、最終回では戦神を押さえながらジャグラーの危機を救えるほどとなった。しかし、これがジャグラーとガイの別離を決定づけてしまう事にもなる。

ジャグラーに助けられたりアドバイスを受けていたりしていたガイだが、段々と彼の意識の中からジャグラーが消えていく事になる。ジャグラーの事を意識してはいるのだがそれまでに比べて比重が下がっているのだ。それは最終回で歴代ウルトラマンやアマテや翔平との話を一通り終えてからようやくジャグラーの存在を感じるようになったと言うところに表れている。そんなガイが色々あって、ようやくジャグラーを正面から抱き締める事が出来たのがTVシリーズの最終回なのだ。

オリジン・ザ・ファーストからオーブオリジンへの変身は今回のミッションが終了してからとなった。TVシリーズでオーブオリジンに変身する時のオーブカリバーの言葉が「覚醒せよ! オーブオリジン!」なので、オリジン・ザ・ファーストは不完全形態でオーブオリジンが完全形態と言ったところだろうか。ガイは戦いの中でオーブの力を引き出していっていたので、それが遂にオーブオリジンの力を引き出せるレベルにまで達したと言うところかな。

今回のダイナ、ガイア、アグル、コスモスとの共闘やTVシリーズでのウルトラマン達のカードの力については「光に属する存在であるウルトラマン達の繋がりが生んだシステム」と言ったところなのかな?

 

ジャグラーは光に選ばれなかった事でガイとの力関係が逆転し、それによってアイデンティティの崩壊を起こした。『オリジンサーガ』ではガイと言う存在やミコットの死等によって崩壊したアイデンティティを『オーブ』エピソード2からエピソード5までの間の話で闇の力を得る事で新たに確立し、『オーブ』エピソード6ではかつて自分がミコットを失ったように今度はナターシやナオミを失わせる事でガイのアイデンティティを崩壊させようとしたと言ったところかな。

 

歴代ウルトラマンの客演はゼロシリーズからあった「違う宇宙のウルトラマン達の間にも光のコミュニティが出来上がった」と言うのを受け継いだものなのだろう。アスカの活躍が多目だったのは小中監督が『ダイナ』のメイン監督だったので扱いやすかったからかなと思う。

アスカとムサシはクグツの設定とスフィアやカオスヘッダーの設定が似ている、どちらも別の宇宙を助けに旅立った事があるを軸にしていた。それに加えてムサシはアマテの不戦の意思に共感すると言う役回りもあった。我夢と藤宮が選ばれたのは状況説明の為とかつての二人の関係をガイとジャグラーの関係に繋げる為でもあった。

歴代ウルトラマン達は最初の登場シーンは格好良いのだがシリーズ全体を見ると今回はあまり活躍できていない。これはある程度の問題を解決できるキャラが主役とは別にいる事によって生じた問題と言える。歴代ウルトラマンが最初から全力を出したら今回の戦いはすぐに終わってしまいそうなので今回は「他の星にあまり干渉しない」と言う設定が加えられたのだろう。だったら何で歴代ウルトラマン達は惑星カノンや翔平達の地球に呼ばれたんだ?と言う問題が出るが…。

個人的にガイアがスプリームに、コスモスがエクリプスに変身しなかったのが残念。たとえば、ホラー映画で殺人鬼が迫ってくる中、主人公は車の免許を持っていて目の前に車があるのに、車に乗らずに自転車で逃げたら殺人鬼に追いつかれて殺されてしまったと言うのはおかしいだろう。こういう時には「主人公は車を運転する事ができない」とか「車が故障している」とか「鍵やガソリンが無い」とかと言う「本来なら使える車を使えないようにする理由付け」が必要となる。今回はそれを行わないままスプリームやエクリプスに変身しないで苦戦していたので違和感を覚えた。

 

サイキに関しては今回の回想シーンで色々分かった。

彼は子供の頃に戦争で両親を失い、そこでクイーンベゼルブと出会った。彼は言動が子供っぽかったが、まさに子供の時から成長が止まっていたのだ。そうなると、やはりクイーンベゼルブが諸悪の根源だったのかな。彼女なりに世界を良くしようとした結果かも知れないが…。

パーテルがシンラ達を助けたのは「自分以外の存在を消し去ろうとしたサイキが作り出したパーテルがサイキ以外の存在を助けた」と言うところが大事なのだろう。サイキの心の奥底にそういうものがあったのか、AI故にパーテルはサイキのプログラムを離れて独自に動いたのかまでは分からないが…。

 

サイキと言うキャラクターは「自分を否定するものを否定する」キャラだと思う。 だからサイキの劇中での台詞の殆どが「何かを否定している」になっているのだろう。

サイキは常に一人で、自分の周りに置いているのは自分の意見を全肯定するパーテルと自分の意思でコントロールできるクイーンとクグツで支配下に置いている怪獣達で、ガイと会話して彼が自分を否定する者だと判断したらあっさりと爆破して殺そうとしたりする。

そしてサイキの理想としている世界だが「争いの無い・憎しみの無い・愛の溢れた・平和な世界」となっているが、その世界で自由意志を持つ存在がサイキだけとなるとそれは「サイキを否定するものが誰もいない世界」だと言う事が見えてくる。

サイキがどういう人生を歩んできたのかまでは明かされていないが、彼は既に「他人に肯定される事」を望んではおらず、「否定されなければ良い」と考えるようになってしまった。だからサイキは自分以外の存在は意思を持たない、つまり、他人が自分を肯定してくれるかもしれないと言う可能性を完全に排除してでも自分以外の存在は意思を持たない、他人が自分を否定しない世界を作ろうとした。

そんなサイキだが、サイキの作ったパーテルが最後にシンラとリッカを助けてしまう。 自分を否定するものを否定してきたサイキだが、そのサイキの分身と言えるパーテルがサイキを否定するシンラやリッカの命を助けてしまい、それを知らされたサイキは涙を流した。結局、人間は何かを完全に否定しようとしても、それには限界があると言う事なのかもしれない。

このテーマが『オーブ』にどう関わるかだが、TVシリーズでガイがジャグラーを、ジャグラーがガイを、それぞれ否定しようとしても完全に否定する事は出来ず、結局はガイもジャグラーもどこかで相手の事を助けたり受け入れたりする事になった、と言うところに関わっているのかなと思う。

 

翔平と結衣は最初は普通の人間だったが命の木の果実を手にした事で超常現象に巻き込まれ、最初はそれに振り回されるだけであったが、やがてそれを受け入れ、今度は逆に自分達の力で奇跡(超常現象)を起こすようになったと言う話だったのだと思う。ここはシリーズを通してちゃんと描けていて、翔平と結衣が命の木の果実を光らせるくだりは盛り上がった。今後、二人は超常現象を経験した人間として、これまでとは違ったものの見方をする事になるのだろう。ひょっとしたらそれが「進化」なのかもしれない。

おそらくだがこの二人の話はそのまま「これまで超常現象が無かった地球も命の木が生えた事で新たな段階に進んだ」と言う事に繋がるのだと思う。ただし、こちらは翔平と結衣以外の人間の描写が無かったので何とも言えないところがある。(ここで青井さんを出して翔平と結衣以外の地球人の変化を描いてほしかったところ)

 

安全装置の話だが、「命の木は最初に生命に知恵を与えた」→「知恵が暴走した時の安全装置としてクイーンベゼルブを作った」→「クイーンベゼルブによって全ての生命から知恵が奪われた時の安全装置として命の木の果実に解毒剤が込めた」と言う事なのかな。なんとなくだが、この後さらに「クグツが果実によって解毒された時の安全装置として…」みたいな新たなシステムが生まれそうな気がする。決定的な答えは無くて、命の木のシステムは時代と共に変化するみたいな感じで。

 

さて、今回のシリーズで問題なのが惑星カノン編。

特にアマテの言動がよく分からないのだが、彼女の言動をよく見ると「彼女の発言によって謎が解ける」「彼女の行動によってクイーンやサイキの思惑が判明する」と言ったように、彼女の場面のほぼ全てが「作品の謎や設定やテーマが明らかになる場面」となっている。そのせいか、アマテ自身のドラマを探ろうとすると一本の軸と言うものが見付けられない。簡単に言えば、物語の展開によって都合良く動かされていた存在だった。

惑星カノン編はアマテを中心にした人間関係だったので、そのアマテが脚本の都合で動かされた結果、シンラやリッカも言動がチグハグとなった。ブレが無かったのはアマテに依存していなかったライゴウとアマテとは別にジャグラーとのドラマがあったミコットの二人であった。

 

見終わっての感想だが、『オーブ』の前日談として見た場合、TVシリーズとの繋がりが弱いので、極論を言うと、『オーブ』とは別のウルトラ作品にしても成り立ってしまう。『オーブ』の前日談や歴代ウルトラマンの客演と聞いて多くの視聴者は『オーブ』や歴代ウルトラマンの活躍や謎解きを期待したのだが、スタッフが今回の作品で見せたかったものは『オーブ』や歴代ウルトラマンの活躍や謎解きではなく、サイキや戦神の話だったのだろう。このズレを理解して受け入れるか受け入れられないかでこの作品の評価はガラッと変わると思う。最終回配信直前に「エピソード10構想」が出たので、TVシリーズとの繋がりが弱くても受け入れる人が増えたかもしれないが、これ、「エピソード10構想」が出ていなかったらどうなっていたかと想像するとちょっと怖い…。

 

最後に、今回の隠されたサブタイトルは『ウルトラマンダイナ』の「明日へ…」でした。