shoryu38の特撮・ヒーロー日記

ウルトラマン、鉄神ガンライザー、ゴジラ、ガメラ、アメコミ映画と色々な事を書いていくブログです。

『大魔神』(1966年公開)

大魔神

1966年4月17日公開

監督 安田公義

特撮監督 黒田義之

脚本 吉田哲郎

 

大映の特撮時代劇・大魔神シリーズ第1弾。『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』との同時上映であった。

調べてみたら、大魔神三部作は全て1966年の公開であった。1年に3作公開と言うスケジュールも驚くが、1966年の1年だけ公開されていた作品がその後も長きにわたって人々に知られる存在となり続けている事に驚く。(シリーズ作品は2010年に放送された『大魔神カノン』まで無い)

 

大魔神は怪獣ではないのだが「特撮を使って巨大な存在を描く」事から怪獣作品の系譜と見て良いと思う。特撮時代劇は数が少ないが、本作を見るに特撮と時代劇は相性が良いと言える。

 

怪獣作品で一番大事で大変なのは怪獣と言う現実にはいない巨大な存在をどのようにして理由付けするかである。怪獣作品では古来より伝わる伝説が出て来る事が多いが、これは神や魔物と言った存在と同一視させる事で怪獣が存在する事を納得させようとしているのだ。しかし、神や魔物と言った存在自体が現代の日本では否定される存在になっているので、現代を舞台にした怪獣作品ではプラスアルファとして恐竜の生き残りや放射能や公害による変異や宇宙生物や遺伝子操作やらと言った現代ならではの理由付けが加えられる事となる。一方、『大魔神』の時代はまだ神や魔物と言った存在が大きな影響を持っていた時代なので、「大魔神と言う神様がいる」と言う説明だけでその存在を納得させる事が出来た。

 

本作では主役の大魔神の出番が遅い。実際に姿を現して動き出すのはラスト15分である。これはゴジラガメラと言った怪獣作品に比べるとかなり遅い。怪獣作品の場合は遅くても中盤辺りに怪獣を出して後半は怪獣を倒す自衛隊の描写に移るのだが、大魔神は神様と言うか天罰の役割を持った存在で、言ってしまえば、デウス・エクス・マキナである。これはゴジラガメラと言うよりウルトラマンに近い。実際、ウルトラマンも登場するのはラスト数分になってからとなっている。

ウルトラマンの場合、どうしてハヤタ隊員は早く変身しないのかと指摘を受ける事がある。それに対してはまず人間の状態で頑張らなければいけないとかの理由付けがされているが、大魔神の場合、ハヤタ隊員のような「特別な力を行使できる人間」がいない。小笹が大魔神を動かすきっかけとなったが彼女自身は大魔神が動いた理由が分からないので、早く大魔神を動かせと指摘しようにも大魔神を自由に動かせる人がいないのだ。だったら、小笹ではなくて大魔神自身に早く悪人を倒せよと指摘したくなるが、実は大魔神が動いたのは悪人を懲らしめる為ではなかったりするのでこの指摘も無効となる。この辺りは実に上手く作られている。

 

大魔神の出番はラスト15分だけで、それまではよくある時代劇の展開になっているが、ここで悪人の左馬之助一味が人々を徹底的に虐げるので、その悪人達を圧倒的な力で叩き潰していく大魔神の活躍に胸がスカッとする。特撮では都市破壊シーンにカタルシスを感じるように作られている事が多いが、やはり都市が破壊されると多くの人が大変な目に遭っていると心のどこかで考えてしまう。しかし本作では大魔神が破壊するのは人々を虐げていた悪人達なので、破壊のカタルシスに懲悪のカタルシスが加わり、よりストレートに楽しめるようになっている。

 

本作では主人公である小笹や忠文の活躍は少ない。花房家は一晩で城を追われ、その後、10年の時を経て反撃の機会を伺うも小源太はあっさりと捕まり、それを助けようとした忠文も逆に罠にかかって捕まってしまう。クライマックスでは花房家を慕う者達が蜂起するが結局はこれらも左馬之助一味に倒されている。だが、主人公達が悪に対して無力であるほど、その悪を圧倒的な力で叩き潰す大魔神の姿にカタルシスを覚える。

 

とは言え、自衛隊なども無く、刀や鉄砲やらで大魔神に立ち向かわなくてはいけない左馬之助一味には悪役とは言えさすがに気の毒になる部分もある。いや、もう、ゴジラガメラを見た後に「大魔神に鎖を付けて人力で倒そうとする」なんて「絶対に無理だ、お前らやめとけ!」と言わずにはおられない。左馬之助の最期は自業自得ではあるが、あの大魔神が自分を殺す為に執拗に迫って来るとかさぞかし恐怖だったろうなと思う。

 

流れ者であった左馬之助は丹波の国の領主である花房家を追い出して領地を奪っている。いわゆる下剋上と言うやつ。その土地に古くから続いていた家を滅ぼし、その土地の信仰を迷信と切って捨て、京に攻め入る野望の為に新たな砦を築くと言うのは守護大名戦国大名にとってかわられていく戦国時代らしい話。舞台は戦国時代ではあるが、古くからの信仰を迷信と切って捨て、人々を虐げて開発を進めていく様は戦後の高度経済成長の日本の姿も重なって見えてくる。

 

大魔神を演じたのはプロ野球選手から役者に転向した橋本力さん。顔が仮面で動かない中、橋本さんは目の演技で大魔神の怒りを表現した。目力がマジで凄い!